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MシリーズやEシリーズのボードは複数チャンネルの電圧を集録する場合マルチプレクサというデバイスを使用してチャンネルを切り替えています。
セトリングタイムとは電圧が入ってきて目標となる電圧値に整定される(落ち着く)までの時間を表しています。左の図の様にマルチプレクサが切り替わる時間がセトリングタイムより大きく設定されている場合には、電圧が目標となる電圧値に落ち着いた後でチャンネルが切り替わるため正常な値で電圧が測定されます。電圧が安定(セトリング)するまでに十分な時間があるという事です。右の図の様に、マルチプレクサの切り替わる時間がセトリングタイムより短い場合には入力されてきた電圧がADCで目標となる値に落ち着く前にマルチプレクサが次のチャンネルに切り替えてしまいます。したがってまだ目標値まで電圧が落ち付いていない状態でDAQが電圧を読み取ってしまい正常な値として出力されません。
したがって複数チャンネルにおいて正しく電圧収録を行うには実際にどのくらいのセトリングタイムが掛かり、どの程度のコンバートレート(マルチプレクサの切り替える速度)を設定するかどうかを意識する必要があります。
通常電圧が安定した値に落ち着くまでに掛かる時間は入力された電圧や出力側のインピーダンスなどにより影響されます。コンデンサの電荷の充電・放電にそれなりの時間を要するのと同じ考え方です。
DAQボードのセトリングタイムを考える際に注意すべき3つの点として入力電圧レンジ、入力電圧、出力インピーダンスが挙げられます。
上記の対策としてアナログ入力レンジをフルスケールに設定して、すべてのチャンネルがフルスケールレンジで適正に電圧が集録できるようにあらかじめ増幅器で電圧を調整してください。
また高出力インピーダンスの信号源に対してはボルテージフォロアー(バッファ)回路などを組み込むことでインピーダンスを抑えることができます。
コンバートレート(マルチプレクサを切り替える速度)に関してですが、低サンプリングレートでの集録の場合デフォルトの設定としてあらかじめ余裕を持ったコンバートレートが設定されている為(約10kHz、10usec程)セトリングタイムの影響を考慮する必要はありません。
しかしながら100kHz(10usec)を超える様なサンプリングレートを設定するとコンバートレートが設定されたサンプリングレートの逆数になります。
例: 3ch集録、サンプリングレート:150kHzの場合コンバートレートは450kHzとなります。
この場合450kHzの逆数の2.22usecでマルチプレクサが切り替わることになります。したがってセトリングタイムが2.22usec以下であれば問題なく集録が行えます。
コンバートレートはプロパティを使用してプログラム的に設定することが可能です。
NI-DAQmxを使ったConvert Clock のRate の設定方法
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