複数の高速デジタイザを同期していますが、マスターデバイスとスレーブデバイスの間には何故遅延が生じるのでしょうか?



使用ソフトウェア:
使用ソフトウェア・バージョン: 2.7
使用ソフトウェア・バージョンに特化: N/A
二次のソフトウェア: N/A
ハードウェア: Modular Instruments>>High-Speed Digitizers (Scopes)

問題:
複数の高速デジタイザをRTSIやPXIスタートリガを通して同期を行っていますが、マスターデバイスとスレーブデバイスの間には何故遅延が生じるのでしょうか?


解決策:
NI高速デジタイザ(NI-5102、NI-5112、NI-5911など)は、RTSIバスやPXIシャーシを使用している場合にはPXIスタートリガを使用して同期をとることが可能ですが、複数デバイスの同期の際は以下の2つの現象が生じます。

  1. マスタボードからのクロック信号は、それぞれ独立したスレーブボードの位相を固定します。この時、すべてのデバイス(マスタとスレーブ)においてクロック信号の立ち上がりエッジは正確に同じタイミングで立ち上がるので、それぞれ独立したボードのデータ集録が同じタイミングで行われます。

  2. マスタボードとスレーブボードはすべて同時にトリガされる必要があるため、マスタボードはトリガ信号の受信時にすべてのスレーブボードに対してトリガ信号を送ります。マスタボードとスレーブボードに接続されたRTSIバス、またはPXIスタートリガラインを通してトリガを送ることによって全デバイスへ同時にトリガリングを行うことができます。

いずれの場合も、マスタボードは物理的にすべてのスレーブボードよりも早くトリガ信号を受信するため、常に最初にトリガされます。そのためマスタボードとスレーブボード間には、マスタがトリガ信号を受信してからすべてのスレーブボードにトリガを転送するまでの遅延が生じます。この遅延は高速デジタイザによりハードウェア的に生じますが、非常に小さなものです。

この過程においてシステム特有のもう一つの遅延が存在します。トリガ信号にはマスタからスレーブへ信号が到達するまでにかかる時間によって生じる非常に小さな伝播遅延が生じます。この遅延はマスタボードからスレーブボードまでの距離を光の速さ(3×10^8 m/s)で割ることによって算出することができます。

トリガ信号がマスタからスレーブへ送信される際にデジタイザのハードウェア的な機能と伝播遅延による2つの遅延は、除去することができません。これはある種の欠陥のようにも見えますが、ソフトウェアによって簡単に回避することができます。PXIスタートリガを使用している場合、これら2つの遅延要素は定数で与えられ、定量化することが可能です。一度これを行えば、スレーブの波形をシフトして正しい時間軸の値へと補正することが可能です。

遅延要素が確実にアプリケーションの動作を妨げている場合、トリガ信号はそれぞれ独立したデジタイザボードへ分岐されていますので、マスターから送信されるトリガ信号がそれぞれのスレーブまで伝達されるまでの間の距離を一定にすれば、スレーブに対してトリガ信号は同時に受信されますので伝播遅延を除去することが可能になります。


関連リンク:
技術サポートデータベース 3F3755LZ: NI高速デジタイザでユーザ定義のトリガ遅延は設定できますか?


添付:





報告日時: 01/05/2001
最終更新日: 06/06/2012
ドキュメントID: 254A19Y5